ISFP受験生の性格傾向・勉強法・志望校設定

 今回は非常に難しいテーマです。私もこれだという解決策を見いだせていません。ISFPは温厚で、直感的(≠直観)センスに優れているタイプであるのですが、正直なところ受験に適合しているタイプではありません。

 もちろん16タイプに関係なく能力は人それぞれですし、タイプ論が全てだとは思いません。しかし、ISFPが受験戦争において勝利を収めるには、様々な条件をクリアする必要があります。

 ISFPはFiが優勢なのでよほど勉強それ自体が好きでない限り、コツコツと積み上げることに大変なエネルギーを要します。一方で最近はWakatte.tvに代表されるバカみたいな学歴語りyoutuberが増えたので、学歴に執着することで勉強に耐えられるというISFPも増えたかもしれません。ただ、直観型であるINFPと異なり、第二機能が外的感覚なのも痛いです。

INFPの場合は学んだ知識から様々な空想に浸ることにより曲がりなりにも勉強時間を確保することが可能です。彼らのなぜ「~なんだろう」という洞察は、巡り巡って深い理解につながるのですが、ISFPはそういう事をあまり考えません。「AとあるからAと覚える」「ここでBが来たらダメと書いてあるからそう覚える」こういう学習法になってしまいがちです。高校受験(そこそこの公立)まではそれで何とかなってしまうということも影響しているかもしれません。

 センター試験ならともかく、共通テストに対してそういう意識で向かってしまうとまるで歯が立たないのは受験に携わる人間であれば理解できることだと思います。難関の国立二次や私立受験であれば言うまでもありません。

 ただ、大谷翔平に代表されるように本当に「好き」を極められるのもこのタイプです。ここに活路が見いだせるような気をしているのですが、誰もが大谷翔平になれるわけではありません。受験に言い換えると、医学部や東京一工など頂点を極めた人間にはISFPタイプがそれなりに存在するでしょう。しかし、彼らのほとんどは科目を愛していると考えられます。つまり、受験に関係なく英語が死ぬほど好き、数学が死ぬほど好きといった感じです。そこまで愛着を抱ければISFPほど深くその科目を理解できるタイプも少ないと思います。しかし、ほとんどの受験生はそこまで科目への愛を抱けないでしょう。

 何とかして彼らを救う手立てはないのでしょうか。今まで失敗してきた自らへの戒めの意味も込めて考えていきたいと思います。

性格の特徴

 直感型と感覚型で最も異なるタイプかもしれません。見た感じ非常に素直で、温厚でかわいらしいので色々とやってあげたくなるのはINFPと同じですが、本人の頭の中は全く異なります。これ以降は、この2タイプを比較しながら接し方を考えていきたいと思います。

 内面は「見たまんま」であることが多いです。争いが嫌いなので厳しく言われても言い返すことは少ないですが、態度に漏れ出ます。相手の言うことをしっかり聞かなければならないと思ったときはそれが態度に出ます。響いてるんだか響いてないんだか分かんないような表情をしている時は100%響いてないです。まあそれはINFPも一緒なんですが、色々考えている結果相手の声が頭に入っていないINFPと違って、「なんか言われてるけどよくわからんなー」と考えてたら話が終わっているという感じだと思います。また、相手の表情や言葉をそのまま受け取ります。間接的なメッセージを送って「これで理解してほしい」と言われても、ISFPからすればそんなものは自己満足というものです。

 ISFPを指導するにおいてはとにかく「わかりやすく、簡潔に、直接的に」がスローガンです。これ以降もこのスローガンを基に具体的な接し方を考えています。

 メンタル面において、INFPの大丈夫は大丈夫じゃないことが多いですが、ISFPの大丈夫は本当に大丈夫です。感覚型なので、自分の精神的なキャパシティについてはある程度理解しています。ただ、自分の達成度の把握についてはINFP同様非常に苦手なので、なるべくこちらから徹底的に詰める(≠厳しく言う)べきでしょう。INFPと違って思っていることがすぐ態度に出るので、その瞬間には嫌な顔くらいはするかもしれませんが、これもINFPと違って翌日には忘れています。

 Fi主機能なので「何を言われたか」だけでなく「誰に言われたか」も気にはしますが、INFPほど極端ではないです。最低限信頼する相手であればだれに言われても同じように取り入れるので、ある程度付き合いのある生徒であれば信頼関係のレベルを気にしすぎる必要はありません。

 その場その場で深く考えるということが苦手です。なので、抽象的な質問をしてもあいまいに返されて終わりです。基本的にはなるべく具体的な質問をしましょう。深い質問をしたい場合は、事前にしっかり解説しておきましょう。

 INFPは「気付いたら忘れている」という不可抗力的な面が強いですが、ISFPは覚えてはいるけど「別にいっか」となってしまう事が多いです。正確に言うとINFPにもそういう傾向はあるのですが、ISFPはINFPよりも確信犯的※に忘れてしまう事が多いです。不十分な点を発見したら根気強くそんな意識ではダメだと伝える必要があります。

※ここで確信犯の用法警察はやめましょう。文化庁もちゃんと新しい用法であると認めています

文化庁 | 文化庁月報 | 連載 「言葉のQ&A」 (bunka.go.jp)

指導法

 Seによりみたものをそのまま覚えるという点においては他タイプより得意です。英単語や漢字、数学の典型問題の暗記は順調にこなしてくれるでしょう。ただ、ISFPの場合はここからが問題で、文字通り丸暗記をしていることが多いので応用の際に全く活かせないケースが散見されます。英語だと英単語を丸々あてはめようとするので文脈に合わせた訳が出来ない、数学だとそれこそ共通テストのような具体的な事例に応用する方法が全く分からないという具合です。

 彼らに対しては、「こういう狙いがあるからこういう学習をしてもらう」という説明を理解してもらうまでしつこく行う必要があります。「ここまでしつこく確認しても失礼だろう」という考えは不要です。不要ですし、本人たちも望んでいません。

 教えている側としては本人のモチベーションの事を考えてある程度のところで指摘を切り上げたくなる事もありますが、それは厳禁です。「まあここまで言えば分かってくれるだろう」と考えてしまうと本人のためにもならないので、思う存分重箱の隅までつつくべきです。INFP/ENFPと違って、困っていると本人が言う時は本当に困っていて、優柔不断な自分を律してほしいと思っています(NFPたちは自分の準備が整うまでは正論をぶつけられても困ると思っているので接し方が異なります)。本当に受験勉強に対して腹が決まっているISFPであれば後から拗ねる心配はないので、出来てない点があれば断固としてこちらからは譲らず、しっかり理解してくれるまで繰り返してもらいましょう。腹が決まっていないISFPであれば……退室覚悟で厳しく指摘するか、塾の運営を考えて優しくいなすか判断する必要があるかもしれません。いずれにせよ、希望的観測に基づいて接すると一番危険なタイプです。

 客観的に見て相手のキャパシティギリギリの量を課題で出すといいと思います。ISFPは出された課題については基本的にはすべてこなそうと(自分なりに)努力してくれます。うまくこちらの要求にこたえてくれたらしっかり褒めましょう。

 ただ気を付けてほしいのは、もし課題が出来なかったときにかける言葉が「次頑張ろうね」だけではダメだということです。本当に時間が取れなかったのか、勉強法に甘い部分がなかったか、なぜ途中で今のままではダメだと気付けなかったのかなど、しっかり詰める(≠厳しく指摘する)ことで自分の力量や態度を理解してもらいましょう。そうしないと、「まあでも自分は今回も頑張ったし」で済まされてしまいます。

 「じゃあどうすればいいか」という部分は苦手なのでこちらで提示してあげましょう。押したり引いたりが必要なINFPと違って、ISFPの場合は本人の達成度を直接的にわからせてあげることが最も近道である気がしています。Fi優勢なのであまりズゲズゲ言うのは違いますが、本人があいまいに済まそうとしているときは厳しく言うことも必要でしょう。気分屋なのでなんとなくで済まそうとしてくることもあります。

 繰り返しになりますが、本人の不十分な点を全部指摘する⇒それを踏まえて課題を出す⇒出来てほしいレベルを細かく伝える⇒やれそうか確認した上で約束をする⇒結果をありのままに判断する⇒指摘する

 この繰り返しがISFPにとっては一番良いのかなと思っています。そのサイクルに予断は不要です。とにかく見たままのことを見たままに指摘してあげましょう。その上で複雑な場合分けやもしもの時の話をしてもあまり聞いてくれませんし困ってしまいます。「とりあえず今週はこうしろ、キツかったらその時に都度言え」と言った方が本人にとっても気楽なように感じます。

 こういうとなんですが、NP(=Ne使い)にとっては大敵です。本人の申告を無意識に拡大解釈するNPと、ありのままをありのままに考えるISFPでは認識がずれる運命にあるからです。本人のためを思って言ったことでも間違ったら「この人の言うことは信用ならない」と思われてしまいますから、特にNe使いは言葉に注意しましょう。感覚型やNJの人はそのまま伝えても問題ないと思います。

志望校設定

 不相応な志望校を掲げてる場合は諫めたくなるものですが、ここはFiメインであるため難しいです。我が強いので、難関大学志望の場合はむやみに説得せずそれ相応に厳しく接することが必要です。その過程で自分の実力不足を理解してもらいましょう。

 逆に真に勉強を愛している場合はミラクルを起こす可能性を秘めています。褒められる点はしっかり褒めて、本人のキャパシティが許す限り課題を詰め込んでいきましょう。

 いずれにせよ、出来ている時と出来ていない時で分かりやすくこちらも態度に表出させる必要があります。行間を読むことは苦手なので、何事もズバッと言うことを心がけていくようにしてください。