MBTIで相性まで考えだしたらそれこそ占いと変わらんよ

相性論っておかしくない?

 元々相性どうのこうのはソシオニクスの理論だそうですが、僕はソシオニクスにはあまり明るくないので、ここで取り上げるのはMBTI界隈でささやかれる相性論に限定します。

 双対関係だの、活性化関係だの、教師と生徒の関係だのよく言われていますが、正直全く実践で使えないのではないかと思っています。

 そもそもこういう相性論を広めるにあたって、広める側の知識が不足していることも問題でしょう。我らがENTPと最も相性がいいのはISFPだとするページがとても多いですが、ぶっちゃけて言いますが僕はISFPが苦手です。理由はいちいち書きませんが僕が触れ合ったことのある限りでは全タイプで一番苦手と言っていいかもしれません。僕と似たような性格の人間がISFPと相性が良くなるイメージすらつきません(INTPであればまだマシでしょうが、「最高の相性」からは程遠いとしか思えません)

 どういうことかと思って調べてみたら、ソシオニクスではI型の場合はpとjが反転するという議論があるとのことでした。もっと深く言えば、MBTIであれば判断基準が内面(Fi/Ti)か外面(Fe/Te)かでPとJは決まりますが、ソシオニクスの場合はメイン機能を基に判定することから、INFJの場合はNiメイン機能のため、ISFJの場合はSiメイン機能のためp判定になるとのことでした。

 どうやら、この理論を知らずにソシオニクスの相性理論からべた書きで「ENTpとISFpは相性抜群!」と書いている人が多いようです。

 そもそもこのP/Jスイッチ自体議論の多い論点であるようですが、そもそも「MBTIに相性論は存在しない」ということは調べればすぐわかる話です。誰でも情報を発信できるこの時代には、フェイクニュースは決して対岸の火事ではないようですね。

 ENTPにとってISFPが最高の相性ではないことは分かりましたが、それではISFJはどうなんだと言われると、やはり諸手を挙げて「相性抜群だ!」とは言い難いような気がします。もちろん、ISFPよりは断然に相性がいいです。僕のマイペースさにイラつきながらもなんだかんだで許してくれるところが好きです。しかし、どうしてもSi優性のためNTP型特有のブラックジョークとは致命的にそりが合わないような気がします。僕の大学時代のほぼ唯一の友達がISFJで、たまに会ってもとても楽しく話せるのですが、あまり背中を預けていられるような感覚はありません。もちろん、それは僕とその友達という極端に特殊な関係正常の話でありますから、「一般化して考えた結果ENTPとISFJは相性が良くない!」というつもりはありません。ですが、相互にすべてにおいて心をゆだねられる関係になるかというと、一概にはそう言い難いのは間違いないと思います。

 もちろんすべてにおいてとは限りませんが、感覚としてはINFJやINTJとは特に相性が良いように思います。大抵の場合ISFJを含み相性論に関係なくその他のタイプとも問題なく接することが出来ると感じているのですが、これはいったいどういう理屈から来るものなのでしょうか。

 相性なんて重視している心理機能次第

 例えば「双対関係はお互いを補い合えるから最高!」とよく言われますが、双対関係とは何でしょうか。

 (あくまでMBTIの理論に則って話を進めますが)例えば我らがENTPであれば、上記のjpスイッチを前提とするならばISFJが最も相性の良いタイプとなります。

 ENTPは外向的直観Ne-内向的思考Ti-外向的感情-Fe-内向的感覚Siという機能を備えていて、これらは機能の強い順に並べられているということになります。これがISFJであればこれがSi-Fe-Ti-Neという順番になります。すなわち、「弱い機能を補い合っているから最高の関係!!」という考え方です。

 一見なるほどと思ってしまいそうなものですが、実際の生活に照らしてみるとあまりしっくりきません。もっと単純な例を挙げるとコンプレックスを考えてみてください。大抵誰かに対してコンプレックスを持つ時って、自分が苦手に思うことを難なくこなす人(あるいは生まれつき恵まれている人)に対して持たないですか?その上で、自分の強みが正しく評価されていないと感じるときはそこを突破口として他人に対して敵意を抱くものです。

 もっと言えば、相手との関係性においてそういう感情など簡単に変わってしまうものでしょう。例えば恋人に求めるものと部下に求めるものでは必要な機能は大きく変わってきます。部下が言われたことをきっちりとこなしている(=Si)とかわいいものですが、ENTPの恋人がそれだけではウマが合わないというものでしょう。

 もっと言えば、恋人に何を求めるかという事ですら一般化することは不可能です。Niによる洞察を求めることもあれば、Neによる話の広がりを求めることもあるでしょう。Seによりその瞬間瞬間の感情を共有したくなることもあるかもしれません。Te/Feによる客観的な意見が必要なこともあるでしょうし、Tiによるひたすら怜悧な意見やFiによる理屈を無視した無制限の同情を求めたくなる時もあるでしょう。「相性論」というと、自分を固定した上で相手のタイプを吟味することが限定になりますが、その実自分の心の在り方を固定することなど不可能で、その場その場で自分の心持をしっかり認識することが大切なのです。

 MBTIは自分の状況や感情ありき

 結局、最も自分の心にとって指針となるものを探求するためにMBTIを活用するわけですから、その自分の心が今何を求めているのかをしっかり定めておくことが大切でしょう。

 例えば業務上部下とコミュニケーションをとる場合は大抵TeやSiが前提となっている意見が欲しいはずです。そういった機能が弱い部下と接する場合は相応のコミュニケーションを考えなければいけませんし、友人や恋人と接する場合はもはや自分の状況や感情に応じて相手に求める心理機能がまるで異なってしまう事になると思います。もちろんこちら側もある程度節度を持っていることが前提ですが、究極的には自分の状況そのものや、心理機能ごとの発達具合によって相性など簡単に変わってしまうのではないかと思います。

 例えば、我らがENTPはINFJと相性が良いと相性論に関係なくよく知られていますが、Feが脆弱なままのENTPではINFJとは決してウマが合わないでしょうし、相性論上最高の相性と言われるISFJ相手でもあまりにも身の回りの世話を軽視するENTPではISFJとまさにバカにし合う関係になってしまうでしょう。また、なぜか僕の同僚になることの多いESTPですが、目的が似ている(=Ti)だけにその手段(=Ne/Se)において決定的にウマが合わなかったりします。相性論上は「目的が似ているから相性がいい」とされていますが、これは確信を持って言えますが、目的が似ているほどそのプロセスの違いが浮き彫りになるものです。これは僕の持論ですが、双方に共通しているFeが悪さをするのではないかと思っています。

 このように人と人の相性ほど一般化することが難しいものはないのです。MBTIは自分と相手の橋渡しをするツールと捉えて、双方の違いを理解するために必要なことを考えるきっかけとしていければいいという程度に考えるべきものなのかもしれません。