IとEを陰キャ陽キャで括らず再定義したい

 安易なレッテル貼りをすると何かを理解した気になりやすいので、こういう分析に走りがちですし、情報を求める側も即座に理解できる分析を求めがちです。とてもセンセーショナルで話のタネにはなるのでしょうが、少なくとも情報を与える側は注意を払う義務があるのではないかと思います。

 間違ってもアクセス数を稼ぐために特にプロセスも示さずに陰キャランキングなどを作って読者を扇動するような人間にはなりたくないものです。

 レッテルではなくその人の思考プロセスから判断すべき

 例えば陽キャの極みであるお笑い芸人やアイドルにも相当数Introvertedな人は存在します。そういう人は当然ながら学生時代ほとんど「陽キャ」に属していたわけで、その時点でI/E=陰キャ/陽キャ論は矛盾です。

 周りを見てもらっても、飲み会が好きで常に楽し気な人を全員Introvertedだと判断すべきかと言えば、必ずしもそうではないと思います。いや傾向としてはありますよ。ここで言ってるのはI/E=陰キャ/陽キャという等式が完全であるかのような風潮に文句があるという事です。

 陰キャ陽キャ論というのは本人の表面的な行動をあくまで周りから見た結果であって、その人の思考プロセスを反映していないという点に問題があります。

 結果としての陰キャ陽キャ論は否定できない

 とは言え、傾向としては完全に否定するようなものではないと思います。

 僕は自認ENTPですが、ネットの診断では百発百中のINTPです。INTPと言えばどのランキングを見渡してもオタクキングとして君臨していますし、ENTPもEの割には一人の時間を大事にするタイプとして知られています。そして、お前は陰キャ陽キャどちらかと言われたらノータイムで陰キャです。

 また今ネットで16personalitiesがこれだけ広まっていることを考えると、その診断結果に強く不満がある人はさして多くないと言えます。それを単純化した結果としての「I/E=陰キャ/陽キャ論」の広まりだと考えられるでしょう。

 それでも再定義する意味は?

 皆困ってないならわざわざ再定義する意味なんかないじゃないかと思う人もいるでしょうが、僕はそう思いません。なぜなら、繰り返しになりますがそのレッテル張りにはその人の思考プロセスが反映されていないからです。

 僕にとってこのブログを続ける意義は心理プロセスを考慮したMBTIの実用化です。休み時間の話題にするのではなく、他人との関わりの中でより深い部分で相手の行動パターンを掴みたいという観点から考察したいのです。

 またこの再定義により、陰キャの僕がなぜこういった仕事で現在やりがいを感じているかという自己探求にもつながるかもしれないという考えもあります。実は陽キャなのかもしれない?それはあり得ません。

 心理機能を見直してみる:I型

 I型とされているタイプは、いずれもFi、Ti、Si、Niを最優先機能とする者たちです。これらの中でもFi/Tiは判断機能、Si/Niは認知機能なのでそういった違いはありますが、じゃあそれらの共通点が何なのかを考えてみましょう。

 Fi/Tiの共通点は実に明快です。いずれも自己の感性を最も優先的な判断基準します。そういう基準が確立されているうえで、それに基づき第二機能であるNeやSeを使って必要な情報を収集していくのです。なので、これらの第一機能を持つINFP/ISFP/ISTP/INTPはとても自律的でマイペースだと言われます。まあこの時点で=陰キャでないのは明らかなのですが、それなら「マイペース」と定義すべきかというとそういう訳でもない気がします。

 Si/Niを第一機能とする者たちはINFJ/ISFJ/ISTJ/INTJと、INTJを除き一概にはマイペースだと言えません。それなら彼らがIntrovertedな人間である所以は何なのでしょうか。

 NやSは判断機能ではなく認知機能であり、これはその人が持つ価値観や世界観のバックグラウンドとなるようなデータを集める機能です。Siは現に明らかに存在する概念や自分の中で当然とされている常識を、Niは自己の中で積み重ねてきた洞察を判断のデータソースとして最も重視するということになります。彼らはまずその自分の中に存在するデータソースをしっかりと明らかにした上で、次は外的世界に合わせて判断の輪郭を作っていくのです。

 なんか同じような同じじゃないようなもやもやとした気分になりますね。ただここで間違いなくI型の人たちに対して言えるのは、「思考プロセスがまず自分ありきである」ということでしょう。

 Fi/Ti第一機能の者たちは内面の判断基準が最優先されるため言うまでもありません。イメージ的にもとてもマイペースな人たちで、あまりズレは感じられません。

 一方で、Si/Niを第一機能とする者たちはどれもJ型でしっかり者のイメージがあるのですが、実はその判断のもととなるデータは主に彼らの内面に存在しているのです。

 もちろんこれは絶対的なものでなくグラデーションなので、彼らも外部からの情報も取り入れるのですが、彼らの場合それは内面的な「常識」だったり「洞察」を形成する上で必要な範囲にとどまります。彼らはある程度外部から必要な情報を仕入れたら、あとは内面的な知的活動により自らが判断するべき方向性を吟味していく方が好きなのです。

 これは言い換えると、陰キャ陽キャかにかかわらず自己の確立のために比較的外部との関わりを必要としない」ようなタイプをI型と言えるのではないでしょうか。個人的にこの説明はかなりしっくりきます。

 例えばINFJやISFJはI型にもかかわらず第二機能Feのため世話焼きなイメージが強いですが、いずれも内面的に生み出された強固な「常識」や「確信」を基にしていると考えると説明がつきます。献身的であるためには、その献身性を擁護すべき内面的なデータベースの充実が必要不可欠なのです。

 心理機能を見直してみる:E型

 となると、E型の定義は陰キャ陽キャかにかかわらず自己の確立のために比較的外部との関わりを必要とする」ようなタイプとなります。それが正しくなるかを検証していきます。

 こちらもESTJ/ENTJ/ESFJ/ENFJのようにTe/Feを第一機能とするタイプはイメージが付きやすいでしょう。Teメイン機能であれば何事にも絶対的で客観的な公理が存在するということを前提に物事を考えますし、Feメイン機能であればとにかく他人の心と自分の心をシンクロさせることを最優先事項とします。いずれも他人に影響を与えることを強く志向するので、E型の陽キャイメージとあまり相違ないかもしれません。

 ※ただENTJについては前回のエントリーの通り見た目はINTPなどと大差ない事が多いです。

 

fakesam.hatenablog.com

 Ne/SeメインのE型についても、Ni/SiメインのI型よりはイメージ通りなことが多いです。

 Seというのは「今まさにこの瞬間」の情報を何よりも重視しますから、何よりも自分の五感で情報を集めます。その結果、アクティビティには他のどのタイプよりも積極的でしょう。SeをメインとするESTP/ESFPはその結果陽キャであると見えることが非常に多いのだと思います。彼らは他の誰でもなく自分で感じた外部の情報を何よりも自己のよりどころとするのです。

 NeメインのENTP/ENFPについては比較的陰キャだと言われ、特にENTPに関しては見た目や行動は完全に陰キャなことも多いです。それでも、「自己の確立のために比較的外部との関わりを必要とする」かと言われたら、確実にイエスでしょう。

 Neが第一機能ということはつまり「新たな洞察を得るのが生きがい」ということです。ENTP/ENFPはそのために外部との関りが自己の形成上前提となっていることが多いのです。

 例えばENTPである僕の例を挙げるとすれば、とにかく可能性を広げるために知識を収集し続け、「自分はこう思う」という結論を持つには持つのですが、常に新たな情報に対してオープンマインドなので、確信と呼べるほどのものは持たず、あくまでも自己の考えは不確定的であると考えます。外部世界が自己の形成に介入する余地を常に残しているのです。残しておかねば不安であるとも言えます。

 INTPが自分の感性を公然の前提とした仮説を立てることを優先するのに比べて、ENTPも確かに自分の考えに固執することはありますが、そういう状況の中ですら他者とのかかわりを重視する「姿勢」を崩すことはありません。もしかするとその方が質が悪いと言えるかもしれませんが、とにかく自分の中から他者を完全に排除することはないのです。

 ENFPも一度決めたらとにかく頑固ですが、特に周りの共感や承認を必要とするでしょう。

 いずれにせよ、自律的なTi/Fiを第二機能として持っておきながらそれ以上に外部からの目に見える以上のデータである洞察をキャッチせずにはいられず、常にその洞察と自身が持つ自律性とを戦わせなければならず、こういう過程で事故を肯定していかざるを得ないという意味で、Neメイン機能のタイプは悲しい業を背負ったタイプであると言えるかもしれません。

 まとめ

 ということで、I型とE型の区別は「自己の確立のために比較的外部との関わりを必要とするか否か」を基準にしてもよさそうです。

 特に判断機能を第一機能に持つタイプは見た目通り、イメージ通りの接し方で良さそうですが、認知機能を第一機能に持つタイプについては思考プロセスとその表出に乖離がありそうなので、深い付き合いをするならばある程度その思考プロセスにまで寄り添ってあげなければならない気がします。

 その中でもSeメインであれば今まさにこの瞬間のデータを最重視するためまだ寄り添いやすいですが、Si、Ni、Neをメインとする人たちは少なくとも時間軸として現在でなく過去もしくは未来を重視するので、周りからすると特に理解しがたいかもしれません。

 「外部との関りに対する考え方」が大事になるだろうと思って書き進めてきましたが、思いがけず「重視する時間軸ポイントの違いもある」という新たな洞察を得ることが出来ました。

 MBTIやユングのタイプ論は少なくとも直観的に大雑把なタイプ分けとしては非常に強力であるように思いますが、学術的に怪しい理論とされているため、あまり実践するための方法論が確立されていないように思います。ちょっとした会話の道具とするのでなく、どうせならレッテル貼りでなく実用に耐えうるように、こういった情報に接する人間は主体的に絶えず考察していかねばならないかもしれませんね。

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