塾講師としてバイトを始める大学生の方へ MBTIタイプ別塾講師としての振る舞い方

 大学生になってとりあえずバイトを始めたいと思う人は多いと思います。いろんなバイトがある中で、学力にそれなりに自信があったり今まで頑張った経験を活かしたいと思う人ならば塾講師を選択肢に入れることも多いと思います。

 肉体労働は少ないし時給は高いし自分の強みを生かせるしでいいことだらけのようにも見えますが、とりあえず入社してみたとしても「思ったとおり稼げるか分からない」という問題があります。他のバイトと異なり、入りたいだけ入れるわけではないからです。校舎の運営者は、高い学費を受け取る以上本人や保護者に対して適切に対応していく責任を負っています。厳しい面でも優しい面でもしっかり生徒を導けないような講師に仕事を与えるわけにはいかないのです。

 思い通りに稼ぐためには、シフト作成者から信頼されなければなりません。とは言っても全てにおいて社員をうならせるほど完璧な仕事をする必要はありません。それよりも、講師自身の強みがはっきりしている事が大切です。

 それなりに社会経験を積んでいるまともな社員であれば、バイトに何もかもを求めるということはしません。どれだけ頭のいい講師だとしても、責任感という意味ではどうしてもバイトは本業の社会人ほど突き詰めて考えることが出来ないからです。そもそもそういう雇用形態なのだから当然ですよね。バイトである以上できることは限られてきます(お金をもらっている人間として持ってほしい責任感は当然必要です)から、出来ることをしっかりこなすアピールをすれば、自然と「こいつは使える」と思われるようになります。

 このように、漠然と頑張ろうと考えるよりもまず自分の強みを明確にしておき、ここぞという場面でどれだけ妥協のない態度を示せるかが大事なのです。そうしていれば、万が一多少の失敗があったりイベントや体調不良などでシフトに穴をあけたりしても信頼を失うことはありません。重要なのは、その人がどういう側面から生徒への責任を果たそうとするのかということです。生徒を正しい方向へ導きたいという気持ちは当然に持ってもらう上で、社員としていてくれると助かる講師のタイプを以下に列挙しました。「どういう能力が必要なのだろう?」ということを想像しながら読んでみましょう。

 

私が生徒を任せたいと思えるタイプは以下の4点です。

 1.批評家:生徒を主体的に分析して弱みや甘えを把握して生徒にぐうの音も出させないほど的確に指摘する能力を持つ

 2.インタビュアー:生徒の状況や想いを適切に聞き取り社員へ報告することで、社員の力を借りながら生徒を適切な方向へ導いていく能力を持つ

 3.モチベーター:受験勉強に苦しんでいる生徒に寄り添い彼らの悩みを引き受けてやる気を引き出す能力を持つ

 4.人たらし:生徒に「この人のために頑張りたい」と思わせる能力を持つ。世界史で言うと劉邦、日本史で言うと足利尊氏ですね

 

 個人的には以上の点に近い講師がいれば、コマを増やしてあげたいと感じます。どうでしょう。必ずしも単純な学力や担当可能な教科の幅が大きければ大きいほど信頼されるわけではないということを分かってくれると思います。大事なのは、指導を受けた生徒がそののちに前を向けるかということで、「質問を解消してくれたらそれでOK」ということではありません。アプローチはそれぞれですが、上記のどのタイプも最終的に生徒に進むべき道を教えてあげていることが分かります。

 30分ほど考えてみて上記の通りに抽象化できましたので、それを軸に話していきます。各MBTIタイプにとってどういう道を目指していくのが最適か、考えていきましょう。

 

 批評家タイプを目指すべきタイプ

 まずこのタイプに向いているのはT型全般です。

 INTJ/ENTJはここにフォーカスを当てられたなら天職でしょう。これまで接してきた人間関係から生徒のタイプを割り出し思考を先回り(Ni)して、「出来たか出来ていないか」という現実を冷徹に突きつける(Te)ことが出来るのはこの2タイプのほかをおいていません。とはいえもちろん客商売ですので、最低限ある程度バランスの取れた成長をしている必要があります。すなわち、Fiがある程度発達している必要があります。高学歴志向が強い生徒であるほどそれが絶妙な飴と鞭となり、もう虜です。僕の場合は生徒のモチベーションが十分であれば、100%任せてしまいます。

 ISTJ/ESTJもこのタイプを目指していくべきでしょう。目の前の問題についてあれこれ考えず、「ダメなものはダメ」と言えるという点についてはINTJ/ENTJに勝ります。多少繊細な生徒の場合はダメージを受けてしまうかもしれませんが、本格派の生徒を任せるには最も適切な心理機能を持っています。ただ、受験生はほぼ例外なく全員毎日多感な時期を過ごしながら大きな目標に向かっています。ISTJ/ESTJはINTJ/ENTJほど人間観察が得意ではないので、好き勝手やってしまうと地雷を踏んでしまう可能性も否めません。情緒的なフォローについては社員からの力を借りながら、多少悪役を引き受けたとしても自分の役目を全うしましょう。心の中のFiがうずいても大丈夫です、最後には必ず感謝されますから。ENTJ/INTJと比べて主観を交えずありのままに報告してくれるので、社員としてはいてくれると非常に助かります。

 また、INTP/ENTPについてもすっぴんの能力で言えば、上記に劣らずこのタイプにふさわしいではあるのですが、彼らの場合は面倒くさがりな性格と、生徒の目の前の問題よりも潜在能力とか可能性に目を向けてしまう(Ne)という点が弱点になり得ます。日頃無意識にノーデリカシーな発言をかますくせに、意識的にたたきのめすのは言うほど得意ではありません(Fe)。彼らは腹の底で相手の能力を見極めてもそれを表に出さないことが多いですが、塾講師をするのであればこの点は要注意です。しっかり「ダメなものはダメ」と言う意識をしていきましょう。

 ISTP/ESTPは、直球で指摘する能力についてはSTJと並ぶものがありますが、やはりP型なので「どうしてもわかってほしい」と感じるモチベーションが弱いです。「説明はしたからあとは頑張って」とならないように、徹底的に感じた事を言語化することを意識しましょう。その後のフォローが大事ですよ。

 インタビュアー型を目指すべきタイプ

 このタイプを目指すべきはNP型全般(Neユーザー)です。

 INFP/ENFPは鮮やかな発想力で生徒それぞれに適切な質問内容を思いつきます。ENFPは問題ないでしょうが、INFPはあれこれ考えた結果そもそも質問しないということも考えられますから、しっかり思いついたことを口にしてください。

 これまであなたの洞察に誤っていたことがあったか思い出してください。勇気を出して、気になることを一つ一つ聞いていきましょう。色々聞きだした結果困ったことがあったとしても、最終的には社員に投げてしまえばいいのです。自力で解決できなかったとしても心配する必要はありません。大事な悩み後を聞き出してくれたことに社員は感謝するでしょう。

 また、質問の内容は中立でなければなりません。すなわち、「最終的に褒めて生徒に喜んでもらって終わりたい」という着地点から逆算した質問になるべきではありません。ジャッジ機能がFiであることから相手に都合の悪い問い詰め方をして生徒の感情を揺さぶることに罪悪感を感じるかもしれませんが、言うまでもありませんがそれは逃げです。全タイプ中最も「ダメなものはダメ」と言うことに気を付けるべきです。無理なら社員に相談しましょう。

 INTP/ENTPはさらに論理的な観点から生み出された問題意識を言語化する能力が高いので、このタイプになる能力も持っています。ただ、INFP/ENFPとは逆に当たり前のように地雷を踏んでしまう事も多いですから、手加減をしながら話を引き出していくことを意識しましょう。

 特にENTPは病気が出てわざと地雷を踏みに行くこともあるでしょう。あまりにもカラに籠っている生徒の場合はそれがショック療法になることもありますが、踏みっぱなしではただただ空気が悪くなって終わりです。最終的にどう心を開かせるのかという着地点を意識してください。

 

 モチベーター型を目指すべきタイプ

 F型全般はこのタイプを目指すべきだと思います。

 INFJは本来批評家タイプにも適性があるはずですが、奥底では意外と他者に厳しい側面がありますから、あまりズバズバ指摘しまうとその優しそうな外見とのギャップで生徒を引かせてしまいかねません。

 じゃあNFPの仮面をかぶってやるしかないのかと言えばもちろん違います。生徒の心理状況を見抜くことが上手なので、ドンピシャのタイミングでドンピシャの指摘をすることができます。タイミングを見計らいながら、生徒に目線を合わせて彼らの悩みを一度引き受けてあげることに徹する覚悟をもつことで、誰よりも優れたモチベーター型になれる素質があります。自分は苦労するでしょうが、いつもやってることなのでなんてことないと思います。

 ENFJも同様ですが、INFJと比べて少し押し付けが強いところがあります。逆に言えばINFJよりは分かりやすく、さらにそれに感化されるような生徒もそれなりに多いので、がっちり自分のお客を掴める可能性があります。INFJよりは論理が明快であることが多いので、しっかり自分を出して指導してあげることで、自分の信者を増やしていける可能性があります。

 ISFJ/ESFJは素のままで指導に臨むことでより多くの生徒に信頼されている可能性を秘めています。思ったことを思った通りに言うことで生徒を励ますことが出来ますし、裏表も激しくないので生徒は安心して指導を受けることが出来るはずです。社員としても、とりあえずISFJ/ESFJがいればどんなタイプの生徒が来ても安心です。幅広く任せられるので、普通にしていれば持ちコマが勝手に増えていくでしょう。お節介なのもいいです。ただ生徒の悩みに言葉通りに向き合いすぎて、結果表面的なコミュニケーションで終わってしまうこともあります。時には生徒の悩みを切り捨ててこちらから切り込んでいくことも必要です。

 INFP/ENFP/ISFP/ESFPは特に生徒がP型である場合には信頼を得やすいです。持ち前のFiによりP型の変人どもが考えている事を敏感に察知することが出来ます。INFP/ENFPは生徒の苦悩を先回りして話をすることが出来るので、メンタル面において信頼してもらいやすいでしょう。

 生徒が目に見えて落ち込んでいる場合、とくにISFP/ESFPは全タイプ中最も親身になって接してあげることが出来ます。ISFP/ESFPの方はそういう時こそ自分の腕の見せ所だとして、全力で手を差し伸べてあげるようにしましょう。ただ、本心が見えづらい生徒が相手だと特にISFPは「我関せず」になってしまう事が多いですから、気を付けましょう。せめてしっかり話を聞き出して社員に投げようという意識が大事です。

 ESFPは何とかして生徒と仲良くなりたいという気持ちは持っていますが、自分の領分を忘れて友達のような関係を築いてしまいがちです。その結果、生徒からあまり個別指導の意義を感じないと思われてしまう事もあるようです。「とりあえずこの生徒はまず講師と仲良くなるところからだな……」と思ってシフトを考えることも多いのでそういう心理にも需要はありますが、より生徒との信頼関係を深めたいのであればオンオフをはっきりするように心がけましょう。代替機能がTeなので、意外とシビアに見ている点もあるはずですから、そういう点を活かしていきましょう。

 また意外ですが、INTP/ENTPはモチベーターとしての能力も備えています。ご存じのように根本の共感能力は非常に低いですが、相手が落ち込んでいると認識したときは、非常に多彩な語彙を用いて(慰めの言葉をかけることを除いて)あの手この手で生徒を勇気づけます。また、それによって相手の顔が明るくなるのを見ることが大好きです。しかし残念ながらそのアプローチが効果を持つのは相手がN型だった場合のみです。また相手がN型であってもやりすぎて相手をしらけさせてしまう事があります。自分の言葉が通用しないと感じた時は、素直に社員へ判断をゆだねた方が賢明です。

 人たらし型を目指すべきタイプ

 大前提として、「何となくこの人のために頑張りたい」「理由はないけどこの人に喜んでもらえると嬉しい」と他人から思われるのは大変なことです。このタイプを目指すには16タイプに縛られない個人的な魅力が必要です。

 その上で、INTJ/ENTJはそのチャンスに恵まれています。切れ味鋭い指摘と含蓄のある言葉、そして何よりその自信満々な態度に魅了される生徒も多いです。生徒への献身の心を背景に持っておけば、生徒もあなたの事を偉大な存在だと認識してくれることでしょう。うちにも学力に優れるINTJの講師がいますが、彼の生徒は代講をほとんど拒否します。彼がいる限り彼の生徒は辞めないので、僕としては安心して計算が出来ます。

 また、ISFP/ISFJ/ESFP/ESFJにもその余地が残されているでしょう。彼らはINTJ/ENTJと違って圧倒的な統率力に恵まれているわけではありませんが、教わる立場の人間が「この人のために何とかしてあげたい」と思えるような裏表のない献身性があります。落ち込んでいる時にクリティカルなアドバイスが出来なくとも、それでも何とかして相手を元気づけたいという姿勢を見せられると、人は心を打たれるものです。生徒にはどこかでこの人に報いてあげたいという気持ちになってくれれば、こちらとしてはしめたものです。持ち前の他人への興味を全面的にアピールして、生徒の心を掴みましょう。

 ISFPについては、前述の通り自分には手に負えないと思える時でも「我関せず」と言う態度を見せないことが大切です。一見心を閉ざしているように見える生徒でも大人の助けを腹の底では求めていますから、粘り強く接していくことでいずれ心を開いていきます。ISFPの率直な言葉と態度は、必ず相手の心に刺さるでしょう。ただ、そこに行きつくまでに乗り越えなければならないハードルがたくさんあります。

 INFP/ENFPは前述の通り生徒に好感を持たれやすいですが、甘えられておしまいになることに気を付けてください。INFP/ENFPの共感能力を逆手に取られて生徒の都合のいい不満のはけ口という風に扱われてしまうと、生徒は堂々と勉強しなくなってしまいます。それでは人たらしとは言えません。生徒の耳が痛いこともズバッと指摘する意識を持つことで、生徒はあなたの事を心の底から尊敬するようになります。一時的な衝突はあるでしょうが、それを恐れてはいけません。相手はただが子供です。

 これまですべてのケースで顔を出していたINTP/ENTPは残念ながら最もこのタイプに向きません。人々は、あくまであなたの問題解決能力や状況判断能力を求めています。「黙って俺についてこい」という態度では周りは動きませんので、トラブルが発生するたびに論理的に相手の弱みを突く必要があります。骨が折れるし腹も立ちますが、これは日頃のあなたのだらしなさが原因ですから、この宿命を受け入れましょう。

 まとめ

 どうでしょう。すべてにおいて、生徒にどのように働きかけるか、生徒の行動をどのように変えることが出来るかにフォーカスが当たっていることが分かったと思います。この時代に、ただただ生徒の質問に答えていれば信頼されるなど思わないことです。自分の強みを活かしながら他人を巻き込むにはどう立ち回ればいいのかという視点は就職活動にも活きますから、せっかくの機会なので深く自己分析して見ることをお勧めします。

 また、自分の熱意が他の誰かを動かすというのは大学生ではなかなか得ることが出来ない貴重な経験です(社会人でもそうそうない)。どうせやるのであれば、徹底的に分析して最小の努力で最大の結果を求めてみてもいいと思います。