上司・部下との付き合い方:ENTP上司・部下編

 新シリーズです。今では塾講師ですが、ここに至るまでいろいろな職場を経験してきました。その過程でいろいろなタイプの上司を持ちましたが、その経験をアウトプットすることで自分の内省に生かしていけたらいいかと思って立ち上げました。

 さて、いきなりで非常に恐縮なのですが僕はENTP上司を持ったことがありません。ただ、僕自身がENTPであり、とうとう部下を持つことになったということで自分自身の経験を書き連ねていきます。

ENTPは16タイプの中でも複雑な性格であると言われますが、その本心はきわめて単純明快です。すなわち、「筋が通っているか」、そして「フェアプレー精神」です。

上司の場合

「行動を論理的に説明できれば失敗してもOK」

 NT族は他のタイプと比べて基本的に成果で物事の価値を判断します。なんとなく方針を決めたり、妥協したり、結果を犠牲にして周りに忖度することを何よりも嫌います。

 ただENTPというかNTPの特徴として、他人をシビアに評価する一方でNTJほどは結果主義じゃないということが挙げられます。「失敗してしまいましたが、こういう結果を期待して行動しました」と説明をすることが出来れば、意外とすんなりとミスを許容します。ミスの内容が稚拙だったとしても、判断に至る経緯次第では逆に褒めたりもします。

 これは、特にENTPは可能性で物事の価値を判断する傾向にあることに由来します。つまり、将来を見据えて総合的にプラスであればOKなのです。

 例えば、部下がビジネスチャンスに失敗し、10万円の損失を出したとします。その時、ENTP上司は部下の仕事に対する姿勢を評価します。その姿勢がENTP上司のお眼鏡にかなうものであれば、「いずれ100万の利益を生み出すだろうからオッケーだろう」と考えます。

 と言うことは、10回に1回より高い確率でチャレンジに成功すれば総合的にプラスです。さらに本人の成長曲線を考えると試行回数が50回、100回となるにつれて成功確率は高まるでしょう。ともかく、この心構えであればいずれ当たるだろうと納得できるものであるなら、それでOKなのです。

優しいようで優しくないランキング1位

 こんな感じなので、表面的には単に甘かったり寛容な性格に見えたりもしますが、要は中長期での期待値でジャッジをしているということです。逆に言えば、可能性を見いだせないのであれば冷たい判断を下しかねないという事にもなり得ます。相手の様子に改善が見えない時は、ENTP特有のヘラヘラした顔の裏で「こいつをハブいても現場は成立するか」と考えだします。その間もオープンな姿勢は堅持し続けますが、すべての準備が整ったら計画を実行して相手を一気に排除することもあります。

 そこまでいかないにせよ、相手が過程を上手に説明できなければどこまでも詰めることになります。これは僕自身の課題ではありますが、ENTP上司はそこに改善の可能性を見出すまで部下のミスを絶対に忘れることはありません。最悪正しく説明できなくても部下が「僕のミスだった」と反省さえしてくれればそれで済むのですが、なかなかそうもいかないこともあります。部下本人がこれを「些細なミス」だと考えて軽く流そうとしている場合ENTP上司は激高します。部下がISFP、ESFP、ISTP、ESTPである場合そういうケースに陥ってしまう事が多い気がします。ENTP上司としては「とにかく改善の必要があるという認識を持っている素振りだけでも見せてくれ」という気持ちでさまざまな角度からアプローチをしているつもりなのですが、対外的にはねちっこく理不尽な上司に見えてしまうかもしれません。

 精進が不十分なENTP上司であればこれが高じてパワハラ気質に見えるかも知れません。部下としては、退職上等でない限りは、とりあえず反省するそぶりだけでも見せましょう。そうすれば勝手に安心します。僕は日頃からパワハラっぽい発言をしないよう必死にこの衝動を抑えています。本人に指摘する時も必死にFiをトレースして柔らかく言っているつもりです。イラつくたびに「いずれ何かがフックとなってこの人と心がつながればいい」と自分に言い聞かせています。実際思わぬ部分でその人と心がつながって信頼関係が生まれることも多いので、そういう時は安心するとともに自分の至らなさを痛感しています。

 ここまで自分のパワハラを正当化しているようにも見えなくもないので自分の名誉のためにも言っておきますが、今のところ2年くらいやってバイトを含めても大学卒業を除いて退職者はゼロ人ですから、何とか「ねちっこい」くらいで留まれてるのではないかと思います。

 この厄介な挙動は、ENTPのメイン機能であるNeに由来します。ENTP本人的には可能な限り相手に有利な解釈をしたいので何度も何度もアプローチをかけますが、これはENTPとしてはトライアンドエラーを繰り返しているつもりなんです。でも見る人が見たら何度も終わったことを蒸し返すねちっこい人でしょう。

 

接し方

 なので、部下としては「なぜこういう行動をしたのか」ということを自分なりに一生懸命説明するようにしましょう。論理的に稚拙だとしても、ENTP上司はその一生懸命説明しようとする姿勢に可能性を感じて高く評価します。なんとなく流そうとしたりはぐらかすのは絶対にNGです。単純に手を抜いてしまったなど、言い逃れようがない事態であれば、素直に白状してください。(多少嫌味は言われるかもしれませんが)ENTP上司はその素直さに可能性を感じてあっさり許すかもしれません。

 そして困ったことがあれば相談すれば喜んで力になってくれると思います。相談されると一生懸命解決策を考えてくれるかもしれませんが、もしかしたらその答えは相談した側からすればあまりにも無機質に思えるかもしれません。自分のアドバイスを無碍にされるとENTPは怒りますから、愚痴りたいなら愚痴りたいと前もって言いましょう。そうすれば今度は一生懸命聞く側に徹してくれるでしょう。

 

2.意見は自分事として率直に言う

 ENTP上司には自信満々に自分の論をまき散らかすイメージがありますが、その真意としては他人の反論を待っています。自分の考えをより研ぎ澄ますためには、他人の意見と戦わせることが必要であると知っているのです。

とにかくぶつかってきてほしい

 意見を求められたときは、稚拙でもいいので、自分の考えをしっかりと言語化するようにしましょう。「稚拙でもいい」というのがポイントで、ある程度成熟したENTPであれば、相手の意見がどんなものであったとしても、本心から生まれたものであればしっかり尊重します。相手の意見が稚拙であったとしても、その勇気と心意気を汲み取って「そういう意見も大事」というフォローに回るでしょう。オリジナリティに厳しいイメージがありますが、とりあえず本心を示すことが大事です。ENTP上司は自分が変わっているということを理解しているので、「普通の意見」にもニーズを持っています。

 逆に我関せずの一線を引いたように見える意見だったり、まともに考えていないことが透けて見える意見については厳しい態度を示すかもしれません。ENTPはルールを守らない割に本質的には強烈なフェアプレー精神の持ち主ですから、「よく分からんけどもう~でいいんじゃない?」という態度に我慢できません。チームなら一緒に考えてほしいのです。「お前も俺と同じくらい労力使えや」となるので、絶対に避けましょう。どこまでもその理屈の論理性を追求してきます。

接し方

 どうしても面倒な時は、「どれだけ考えても自分には難しいですが」と前置きしたうえで月並みでいいのでしっかり意見を述べましょう。そうすれば、ENTPは勝手にその「努力」を粋に感じてフルパワーで働きだします。もちろんしっかり考えた演技も怠らないでください。ENTP上司は気難しいように見えますが、上手く使えば自分が楽です。Ne-Tiという厄介な心理機能ですが、頼られるとFeが勝手に発動して他の人の仕事までこなそうとします。

 逆にENTP上司の意見に不十分な点があるときは、最低限相手のプライドに配慮した上で率直に自分の意見を述べましょう。相手に真剣さと論理性の両方が認められるときは、ENTPはあっさり自分の意見を変えます。くれぐれもこれ幸いとここぞとばかりにENTP上司をコテンパンにすることのないようにしてください!ENTPは「フェアプレー精神」の持ち主ですから、本人的には日頃相手のミスに寛大なつもりですので、自分のミスを責められると根に持つ可能性があります。もしあなたの意見にENTP上司が折れたらその度量を称賛してあげましょう。ENTP上司はそのことに感謝し、あなたの事を一目置くはずです。

<ENTPが部下だったら>

 生意気で厄介だと思います。いつこちらの寝首をかかれるか分からないような不気味さを感じるでしょう。その割に、仕事を振ると的外れなことをするかもしれません。しかし、再三述べていますが、ENTPとしては「フェアプレー精神」に忠実であるつもりなだけです。意外と話せばわかるのです。

 ただ、彼らに組織の論理を強要するのはきわめて悪手です。しっかり腹を割って自分の弱みや卑怯な点をさらけ出すと正義感のエンジンがかかります。特にあなたがS型だと理解できないかもしれませんが、ENTPの傲慢不遜に見える態度は本人としては自分の弱みをさらけ出しているつもりなのです。理解できなくてもいいですが、とりあえず寄り添って聞いてあげましょう。そうするだけでENTPたちは「この人は信頼できる」と安心します。Ne-Tiにより無条件に権威を信頼することはありませんが、自分の意見を聞いてくれる人であればそれだけで信頼しやすい傾向にあります。

 ENTPは上司だとしても部下だとしても、とにかく理解してあげる姿勢を示してあげることが大事です。そうすれば、10でも100でもアイデアをあなたに話してくれるようになります。そのうち90%は使い物にならないでしょうが、そのうち使い物にならないものについてはなぜ採用できないのか丁寧に説明し、10%の光るアイデアをほめてあげれば、その実現のために下手くそな劣勢Siを持ち出してでも勝手に努力してくれます。まさにバカとハサミは使いようです。

<不健全ENTPが上司・部下だった時>

 非常にやっかいですね。悪い面を挙げるとこんな感じです。

 口ばっかり、偉そう、上司や先輩に対して失礼、否定から入る、上から目線、自慢話がすごい、都合のいい話しか聞いていない、ホウレンソウが雑、余計なことを言う、スキームを変えようとして無駄に時間を使う、そして普通の仕事をトチる

 こんな感じでしょうか。本来ENTPの最大の特徴は柔軟性と批判的思考なのですが、不健全な状態だとそれがことごとく悪い方向にいきます。それでもたまに面白いことを言うのですが、相手の意見に対しては基本的に否定から入るのでこういう人は組織の中で相手にされません。それでムキになって全部自分でやろうとするのですが、劣等Siなのでまともに形になることはありません。その結果本来やるべきルーチンワークが雑になり、余計に周りから嫌われます。

 僕自身若手自体はこんな感じでしたし、正しく発達していないENTPの先輩が大変そうにしているのをよく見ました。上司ではありませんが先輩にいたことがあります。そのころには僕はNeの使い方を覚えてそれなりに上手くやれていたのですが、その先輩はみんなからうっすら嫌われていました。

 不健全ENTPが上司だったら?

 何か変なことを言っていても流すしかありません。適当にあしらいながらこちらで仕事を仕上げましょう。そういう人は確実に組織の中で悪目立ちしているはずなので、あまり相手にせず自分の日々の業務をこなしていたら割と早いタイミングで周りがあなたの健気さを評価してくれるでしょう。その上で周りに相談すれば、別の部署なりがあなたを引き抜いてくれると思います。こういう不健全ENTPが更生するのは簡単ではありませんから、無理に戦おうとしないことです。

 不健全ENTPが部下だったら?

 これは非常に難しいです。

 無能な不健全ENTP

まず上記のような本当にどうしようもないENTPの部下を持たされた時は、色々と犠牲にする覚悟で接しましょう。若手がやるような単調な作業はまず出来ません。ある程度業務が属人的な部署だったり、ベンチャー企業であれば道を切り拓く可能性もありますが、マニュアルが整備されている大企業であればほとんどこの時点で詰みです。長い時間かけて向き合っていくしかないでしょう。仕事が出来ない自分を変えたい気持ちは強いですから、10言えば3くらいは実践してくれると思います。どんなに舐めた態度を取ってきても、あきらめずに粘り強く声をかけ続けましょう。地頭は悪くないですので欠けているピースが埋まれば劇的に成長する可能性も秘めています。

 仕事はできるけども……

 もう一つ、仕事は速いけど人間性が終わっているパターンもあります。この場合は使い捨てにしましょう。自己肯定感マシマシ(あるいは自分のアイデンティティとして仕事の能力に固執している)なので、人間性が改善されることはないです。一方で、自分の事をちゃんと評価してくれる(目上の)人に対しては忠実だったりするので、右腕として使ってやってもいいとは思います。ただ、心の底から尊重し合えることはありません。戦略的互恵関係として、お互いに利用しあうのがベストでしょう。

<まとめ>

 いかがでしょうか、面倒な性格だと思います。しかし、こちら側が覚悟を決めて向き合えばこれほど操縦しやすい性格はありません。あなたの振る舞い次第では頼れる上司にも忠実な部下にもなり得ますが、扱い方を間違えるとパワハラ上司にも無能で責任感のない部下にもなり得ます。しっかり根気よくこういうタイプの人間に向き合うのは骨が折れることかもしれませんが、ここぞの突破力は他タイプの追随を許しません。こういう人間をうまく使いこなす人が出世するのではないかと思います。

 MBTI分析を知っている他の15タイプは、健全なENTPと関われたらチャンスタイムだと思ってほしいです。これ以上に単純なタイプはないですから、上手く成果を横取りして出世してほしいと思います。なにも罪悪感を感じることはありません。当のENTP本人は他の人の役に立てたことで満足しているはずです。