INTP/ENTP受験生・生徒への対応について(完全版)

 最初のころにINTPとENTP合同で記事を書きましたが、どうやら需要があるらしいので掘り下げて書いていきます。他人から指図されることを嫌っているNTPを生徒として受け入れることがほとんどありませんので、指導における実体験を書き連ねることはできませんが、僕自身がENTPとINTPの中間みたいな性格(本来ENTPだが中高生のころにINTP寄りの考え方をするようになった)なので、自分の経験をベースにして話していこうと思います。

 NTPには勉強が得意だというイメージがあります。知識をため込んだりモデルを作り出すことが大好きなので、確かに「結果として」勉強が得意になる傾向はあると思います。

 ただ、勉強に興味を持たない生徒もいます。もちろん本人のスペックにもよるかもしれませんが、勉強に好奇心を突き動かされず成績が振るわないNTPも少なくないようです。

 同時に厄介なのが、彼らはプライドが高いということです。要領よく論理的に概念を整理して要領よく本質にたどり着くのが彼らの美学ですが、一方チャレンジャー的な立場から努力して上り詰める様を人に見られることは嫌いです。なので、勉強に苦手意識がある生徒は最初から勝負を降りてしまう傾向にあるかもしれません。

 ただ、彼らの適性の本質はやはり学んだり考えることにあります。正しいベクトルに価値観を持てばしっかり成績が伸びるような性格タイプであることには間違いないのですし、適性のある職業に就くためにはある程度学歴が必要なことも多いです。我々はそんな彼らをどう導いてあげたらよいのでしょうか?

 1.基本的にほめて伸ばす(合理的に)

 感情に無頓着だというイメージが強いですが、表に出すことが苦手なだけでそういう訳ではありません。むしろFeにより他人から認められることを欲します。

 褒められるとうれしいし、それだけで「この人のために頑張りたい」という気になります。何かあればすぐに褒めましょう。特にINTPに関しては、内向性が強いとあまり褒められることを気にしていないように見えますが、プライドは高いし周りが自分をどう評価しているのかそれなりに気にします。まずは自分が相手の「能力」を高く評価していることを伝えて安心させてあげましょう。

 ただその上で大事なのは「あなたの事を心配している」あるいは「あなたの事を大切に思っている」という働きかけは全く効果がないということです。NT型の宿命として、能力を重んじます。心配されていることを惨めだと捉えるINTP/ENTPは少なくないでしょう。共感するのではなく、あくまで能力をほめることです。

 前も話しましたが、特にF型がやりがちな「~と思いたい」という気持ちが見え隠れするような説得は全く無価値で、本人たちの心に全く響きません。何気に世間体を少しは気にするのでしっかり向き合ってくれた人に対して露骨な態度は見せないでしょうが、心の中ではどうやり過ごすしか考えていません。合理的な説明を施した上で、「君の実力であればこのテクニックを学べば簡単に点が取れる」と言えたら、本人もその気になってくれるでしょう。まさに豚もおだてりゃ木に登るです。

 基本怠惰な性格ですが、勝機が見えると効率的に目標達成に向けて動いてくれるでしょう。

 2.説明:やってほしいことの意義を説明する(時に激しく)

 生徒の意思で自分から塾に通っている以上、指導する側からすると「勉強はとりあえずするものだ」と思いがちですが、NTPたちは必ずしもそうではありません。こちらがいつも通り単元の重要さを伝えたとしても、彼らは常日頃独自理論で受け入れるべき話を選別しているため、結果としてこちら側の話を全く聞いていない可能性があります。

 彼らは一般的な学習ルートに固執する必要性を感じていませんし、そのため「だまされたと思って」という言葉が最も嫌いです。「いいからやれ」という指導法は全く持って逆効果になってしまうでしょう。

 個人的な経験で言うと、僕が通っていた塾では英文解釈の理解を重視していましたが、私はほとんどスルーしていました。それでも毎日のように講義がありましたから、感覚的に構文から日本語訳をとる方法をある程度身に着けることはできましたが、明らかに不十分だったと思います。

 あの時に、なぜSVOCを気にする必要があったのか、なぜ構文を考える必要があったのかをしっかり説明してくれていたらと今でも思います。

 上記の内容と重複する面もありますが、NTPが相手の時は、やってほしいことの意義や意図を可能な限り言語化しなければなりません。その言葉が論理的で、NTPたちにとってぐうの音も出ないような内容であれば、あっさり取り組んでくれるようになるかもしれません。志望校の出題傾向や、合格得点率、本人たちの現時点での得点見込みなどを総合して伝えると納得しやすいと思います。

 NTPは疑い深いですが、疑わしい理論でも一度納得するとこっちが拍子抜けするほど受け入れる傾向があります。とにかく合理的な視点から淡々と必要性を訴えるとやってくれるでしょう。特にこういう面から、日頃周りを論破して遊んでいるENTPですが、実際のところ詐欺に遭いやすいらしいです。

 ともかく合理的に説明することが大事ではあるのですが、その上で大事なのは、この時点で相手にしているのはまだまだ人間性の発達が不十分な十代を相手にしているということです。大人の論理や厳しさに触れた事のないNTPは(本人の自覚はともかく)世間で当然とされているありとあらゆることに懐疑的で、自分の理論や能力を過信しています。

 世間的に一般的であるとされる正論をぶつけても、そしてその正論が客観的に一定以上妥当性を持つと考えられるときでも、「ありきたり」である時点でNTPからすればバカにする対象になってしまうかもしれません。ここが彼らの愚かな点です。本人の素質的としては社会で大いに必要とされるものを秘めているにもかかわらず、「うまくやること」を学んだ頃にはもう手遅れである可能性があるのです。

 そこで大事なのは、本人たちを徹底的に議論で打ちのめすことです。なにも人格否定をする必要はありません。ダメなものはダメだと強く言い切りましょう。本人たちはそれなりに理にかなったことを言いたがりますが、たいていの場合は現実をなめていることが多いです。変に配慮や譲歩をしても無駄なので、徹底的に逃げ道をふさいであげる必要があります。

 「徹底的に逃げ道をふさぐ」のはENFPへの対処法としても有効ですが、NTPは彼らほど理屈を無視して言い逃れすることはありません。ある程度勝ち目がないと悟れば素直に白旗を挙げてあとはおとなしく言うことを聞いてくれるので、それまでは心を鬼にして向き合いましょう。

 上記については、特にF型の方は「かわいそうだ」と思うかもしれませんが、あなたが相手するのは人間ではなく(暖かい)ロボットです。本当にコテンパンにする必要はなく、違うものは違うと言うだけですので、フォローするのは相手が心を開いてからにしてください。

3.彼らのプライドをうまく利用する!

 彼らは結果的に勉強が得意で、要領よく成績を挙げてきたという自負があるので、受験においても謎の自信に支配されてしまっていることがあります。そこで前述の通り徹底的に論破することが必要なのですが、一度相手が白旗を挙げたらその後は極力プライドを傷つけないように接してあげる必要があります。

 前述の論破はNTPたちの勉強方針を改めてもらうための論破であって、彼らのベース能力に対する釘刺しであってはなりません。ある程度自分の状況を理解してもらえたら、そこからは褒めて伸ばしましょう。このフェーズ以降、強い言葉で指摘するのはあまり好ましくないです。心を開いたNTPは1言えば10分かってくれることが多いので、軽い助言にとどめましょう。彼らには「自分は要領がいい」というプライドがありますので、軽く言えば頭をフル回転させてこちらの意図を汲み取ってくれるはずです。

 ただ、図に乗らないように注意してください。

 

4.勉強が苦手なNTPは……

NTPが「頭いい」のは地頭がいいから?

 NTPには地頭がいいイメージがありますが、それは所詮イメージです。MBTIはあくまで考え方の傾向を表したものであって、「NTPであれば勉強ができる」とは限りません。彼ら成績はいい傾向にはあるのでしょうが、その源泉は知識欲ですから、その知識欲が正しいベクトルに向かわなければ普通に成績は人並みです。努力が出来ない分人並み以下になることもあるでしょう。

 ただ、彼らは変なところにスイッチがついていたりするので、何かをきっかけに勉強しだす可能性が高いです。無理にこちらからあーだこーだ指示せずに、とにかくほめて伸ばしましょう。彼らにとっては自分が出来ることが一番大切なので、出来たらそれを認識してもらうためにしっかり受け止めて言葉にしてあげましょう。まずは勉強や成績にプライドを持ってもらうことが大事です。

 学歴の話に興味を持ちがちなので、高校生の後半になるころにはそれなりに勉強に熱が入っているか、それなりに今後の選択肢を絞っていることが多いです。もし勉強自体に興味がなくても自分が必要だと思ったらそれなりに頑張ります。努力を人に見せるのはあまり好きではないので保護者からすると不安に感じるかもしれませんが、模試の成績がちゃんと向上しているのであれば彼らの自主性を尊重してあげましょう。

 彼らは苦手な科目でもプライドがあればそれなりに頑張ります。基本的に問題を解きながらコツを掴むのを得意としているので、あまり一般的な勉強ルートを押し付けるのではなく、問題演習を並行させながら必要な知識とその運用方法を学ばせるとよいと思います。

 もしいい年になっても全く勉強しないのであれば、そもそも別の領域に適性があるのかもしれません。得意なことに興味を持つはずなので、出来ることを伸ばしてあげましょう。冒頭で「彼らには学歴が必要だ」と述べましたが、それはあくまで傾向であって絶対ではありません。彼らには圧倒的な応用力がありますから、勉学以外でもなにか死ぬほど頑張った経験があれば、それを極めずとも何か一つある程度上達した経験を糧に上手く世渡りしていくでしょう。死ぬほど頑張れる何かを見つけるサポートをしてあげるといいかもしれません。

 

保護者が注意すべきこと

 とくに保護者の方に注意してほしいのは、生徒から勉強の話をしてきた時はとにかく聞き役に徹することです!彼らは自分の理論を言語化して人に知らせることに喜びを感じますから、なんなら分からないフリをして講義してもらいましょう。人に話している間に頭の中の点と点が結びついて、勉強が楽しいと思ってくれるようになるかもしれません。

 彼らの講義をろくに聞かず「それで次は点取れそうなのか」と返しているならば改めた方がいいです。彼らは点を取るために熱心にあなたに説明しているわけではありません。言語化の過程で論点を整理することに楽しみを見出しているのです。ましてや他の教科の話をすべきではないでしょう。彼らが数学の話をしているのに「英語はどうなんだ」とか返すのは論外です。

 彼らが勉強をするためには、繰り返しますがまず勉強が楽しいと彼らに思ってもらう必要があります。少なくとも入り口の段階で客観的な結果や将来を意識させようとすると間違いなく逆効果なので注意しましょう。ある程度勉強に対するプライドが生まれてきたら次にそういう部分を意識させる必要性が出てきますが、それはまた別の話です。

 

終わりに

 INTPとENTPをひとまとめにして話してきましたが、この2タイプは勉強に関しては好奇心で動く、そして独自の論点から自分の能力について強烈に自信を持っているという点で共通しています。多少変わる点はありますが、大事なのはFe持ちのため他人の評価をそれなりに気にするという点です。我が道を行くタイプに見えますが、決してそういうことはないのです。根本的には相手に喜んでもらうということに価値を感じます。ただ、「いい成績を取ってほしい」「いい大学に行ってほしい」という一心で接しても彼らの心を動かすことはできません。彼らの謎を共に探求するパートナーとして接してあげることが大事です。彼らが知的探求の旅から帰還してきた時に何か成果を誇らしげに掲げていたら、全力で彼らの話を聞いてあげましょう。