8つの心理機能のうち、最も説明が難しいのがNi:内向的直観です。
現在MBTIが日本でも流行っていて、各タイプの心理の動きを説明するサイトも急増していますが、Niの説明はどこを見ても「ビジョンを信じる」だったり「未来を予知する」といった抽象的で超現実めいた説明しかされていません。何となく、地に足の着いた説明がほとんどされない傾向にある気がします。
NiはINFJおよびINTJがメイン機能、ENFJおよびENTJがサブ機能として活用しているのですが、前述の4タイプはどれも希少なタイプとして知られています。すなわちNiを持つ人間がレアキャラなのです。Ni持ちの数があまりにも少ないので「ユーザーの生の声」が届きづらいのですね。
それでもN型、上記で言えば特にINFJなんかはMBTIに興味を持つことが多いので、Niとは何かをユーザー目線から説明してくれているコンテンツも探せばあります。
が、やはりピンと来ることは少ないです。とりあえずNeとは違うようですが。
Neメインである僕から見ても、NiメインのINTJやINFJは明らかに自分とはタイプが違うように思います。結局Niとは何なのでしょうか。
唐突ですが、僕の心理機能は以下の通りです。
これだけ見るとINTJのようにも見えなくないですが、それは絶対にあり得ません。このブログでもいちいち説明が長い私の姿を見てもよくわかると思います。このNiとTeは社会人としていろんな受難を乗り越えた結果獲得できたものであり、今のパーソナリティが確立してきたのは20代の終盤になってからだからです。「これがNiか」と感じるようになったのは塾講師として最低限の経験を積むようになったほんの数か月前からです。Neで無軌道に広がった思考を意識的にかつ首尾よく収束させて表出させなければ、どんなに面白いアイデアでも周りから何一つ理解されないと学んだのです。
他の心理機能テストをやっても傾向的にはあまり上記と変わりません。つまり、僕はNi的な思考をトレースする方法をある程度マスターできていると言えるかもしれません。そんな感じで「非ネイティブ」のNiユーザーである僕がNiについて説明してみるのも面白いかなと思いました。ただ所詮は非ネイティブなので、Niペラペラの方々から見ればぎこちない説明になるかもしれませんがそこはご容赦ください。コメントで突っ込んでもらってもいいです。
1.未来の「あるべき姿」を想像してから情報を集める
結局「未来」というワードを使ってしまいました。「あるべき姿」というワードも要は「ビジョン」ですね。
これは今の塾講師と言う職業だとすごく感じます。
入塾前には現状や志望校の聞き取りをするため必ず最低一度面談を行うのですが、そこでは現時点でのやる気をあまり重視していません。学力は模試の情報があれば十分です。それよりも双方向のコミュニケーションから生徒の性質や考え方を見ていきます。
例を挙げると以下のような情報を求めています
・志望大学に行きたい動機をしっかり持っているか?
→根本の気持ちをしっかり持っていない生徒は、勉強が苦しくなっていくにつれてほぼほぼ成績の伸びが鈍くなっていく
・人の話を聞く柔軟さがあるか?
→頑固にアドバイスを聞かず無駄な時間を過ごす。最悪なのは「あるべきじゃない」自分の姿を指摘されたくないタイプ。
・自分が誤っていると理解した時に素直に白旗を挙げられるか?
→生徒が明らかに自分に甘い事を言ったときは、言い逃れできないまで理詰めで説得してみたりします。その時に聞こえないふりしたり流そうとする生徒は厳しいです。現状の自己認識が甘いだけなことはさして問題ではありません。
面談ではこういった性向を生徒が持っているのかどうかを真っ先に確認します。なぜならこれまで培ってきた人生観から、受験生は正念場ほど熱意ではなくてこういう根っこの部分が大事になってくるということに確信を持っているからです。もちろん志望校と現在の偏差値の差も気になりますが、それと同じくらい生徒の性格や受け答えの傾向を重要視しています。面談の際に自分の熱意を語る生徒も多いですが、ほぼ無視しています。
このようにNiを使う場合、現在のありのままの姿に囚われず、将来あるべき姿から逆算して「より重要だと思われる要素」を優先して探そうとする傾向にあるかもしれません。また、Ne全開の時よりもNiを使っている時は減点方式で相手を見ているように思います。Ne優勢の時は、「粗削りだけどやってくれるかもしれない」という部分を優先して探している気がします。この時は加点方式ですね。どちらが正しいという話ではありませんが、個人的には経験上減点方式で人を見た方が予測の精度が高まるという認識の下でNiが伸びてきたような印象があります。
ここでいう「重要と思われる要素」を論理的に導き出そうとするのがINTJで、論理を超えた部分から導き出そうとするのがINFJかもしれませんね。
なおこれがSe優勢であれば生徒の現状の熱意を重視して、Si優勢であれば生徒の面談での言葉や態度を言葉通りにしっかり受け入れた上で今後の伸びを予測していくのかもしれません。
ちなみに僕はもし面談相手がそういう「危ない」生徒の時は、面談の感触が良くても一度必ず釘を刺して、それでも向かってきてくれるのであれば腹を決めて入塾してもらっています。で、たいていの場合案の定後から苦しめられます。
結局入塾を許してしまっているのは、所詮僕がNeベースであることに由来しているのかもしれませんね(営業的には良いのかもしれませんが)。これがNiネイティブの方であれば、もっと容赦なく現実を突き付けていると思います。あるいは徹頭徹尾「お客様」として接するよう切り替えるでしょう。
2.ある程度先が見えるとあきらめる
よくNeはショットガンで、Niはスナイパーライフルだと言われます。「目に見えない何か」を追い求めるのはNeもNiも変わりませんが、Neは無制限に可能性を追い求める一方で、Niは一つの可能性を確信して突き進みます。言い換えると、Neのスローガンは「こうかもしれない」であり、Niは「こうに違いない」です。
この仕事をしていて思うのは、3か月後の生徒の状況を100%の精度で言い当てるのは至難の業だという事です。ただ、80%くらいの精度であれば割と容易に推定することが出来ます。
なぜなら、性格に根差した学習習慣や考え方は基本的に最後まで変わらないからです。特に、結果に対して後付けの言い訳が上手な生徒だったり、自分の都合を優先して学習を遅らせてしまったり、事前の約束と違う時間の使い方をしてしまう生徒はほぼ間違いなく最後まで変わりません。仮にどれだけいわゆる「地頭」が優れていたとしてもです。大抵どれだけ説得しても学習習慣を変える努力はしてくれないので、無鉄砲な暗記に走ったり、そもそもまともに勉強してくれないという状況に陥ります。
こういった生徒に対して、私自身Neネイティブなのである程度期待をかけます。しかし、ある一定のラインを越えたら「本人が覚醒してくれたら」「気付いてくれたら」という希望は捨てて接するようにしています。その段に至っても「どうせ聞いてくれないだろうけど世話を焼いておこう」という心積もりでいろいろとアプローチをかけますが、そこからまともに向き合ってくれたケースは一度もありません。あまりにも何の進展も見られない生徒に対しては最終的に退塾してもらったりします。
Neを駆使して見れば「この子はもしかしたら化けるかもしれない」と見えたとしても、Niのレンズを通してみれば「どうせ言っても響かないからそれを織り込んで着地点を考えなければ」となるのです。何か言っても改善は見込めないだろうと判断したら、志望校にふさわしくない学習状況だとしても、これ以上とやかくいう事はありません。世の中志望校の2ランク下に通うことが普通なのですから。下手に戦ってモチベーションを粉砕するよりも適当にいなして最低ラインを死守してもらう方向で考えるようになります。本人の心持や態度を含めて到達可能な範囲での最善の進路を進んでもらえばそれでいいと思うのです。
特にINTJの説明で「先を見通して諦めを付ける」と表現されることがありますが、まさに諦めるというのはNiに顕著な事象かもしれません。「どうせこうなる」のです。Niが強いと、現状の様子や状況から可能性の高い着地点を予想して、それに合わせて向き合う力を加減していくケースがよく見られるでしょう。
これがINFJであればそれでもFeにより無理に奉仕して予想通り裏切られて勝手に傷つきます。また、生徒に対して本当に感情移入しているからこそ厳しい言葉を投げかけたりもしますが、基本的に同じ熱量で返ってくることはありません。INFJが生きづらいと言われているのはそういう側面もあるかもしれません。
僕の場合ベースはNeですから、少し気を抜くとまた状況は変わってきます。Ne優勢であれば何かしらこの生徒の優れた点に着目して、「もしかしたらどこかでやってくれるかもしれない」という発想で接することになります。Neは先入観を持たないという点が最大の特徴です。いったん相手の言い分を何であれフラットの立場で受け取ることを良しとします。その結果生徒は自己肯定感を下げずに過ごすことが出来ますが、結果はほぼ期待通りになりません。ただでさえ10代の人間は大抵予想以上に浅はかで向こう見ずです。そういう相手とまともに接して信じたくないものと向き合えと言うのが無理な話なのです。それならNiを駆使して厳しい事を言っても正しく反発してくれる可能性に賭けるし、その価値すらないのであれば無理に触らず楽しく受験生生活を過ごしてもらうのが本人のためでしょう。
このように、Niが優勢だとある程度相手に先回りして物事を見通すようになります。人間は個人に応じて性格や能力は千差万別ですが、「人間とはこういうものだ」「世の中とはこういうものだ」という画一的な判断のもとに接し方を決めてしまう事があります。ただ、Neネイティブの身としては「どうせこうなる」の予想が裏切られることに格別なカタルシスを感じることがあります。真に覚醒してこちら側の要望に応えてくれるようになった生徒に対してはそれ相応に接していきたいものですね。
まとめ
個人的にはNeベースでありながらNi的な発想を駆使できるようになってからは、人と接するのがとても楽になりました。他人を変えてしまうのにはとてつもないエネルギーが必要ですから、ある程度の諦めは必要です。こう言うと職責を果たしていないようには見えますが、必要があれば退塾覚悟で働きかけは行っています。それでも、その働きかけが裏切られるたびにこちらがダメージを受けていてはキリがないのです。
逆に言えば、Neベースだからこそ必ずしも相性抜群とは言えない人と付き合えたりしますし、自分の想定を少しでも超えてくる生徒に対して愛情を注ぐこともできると思っています。
いずれにしても、何事でもある程度の着地点を決めて物事に取り組むというのはとても大事なことであるように思うし、Niとはそういうサポートをしてくれる心理機能だと考えています。しっかりした想定があるからこそ想定外の事象への対応力が生まれるのです。世の中で成功者と言われている人にINTJ/ENTJが多いのも納得ですね。
ただNiだけに頼ると現実を無視した地に足のつかない発想になってしまいがちですから、いろんな機能を思い起こしながら適切な未来を思い描いていくことが大切です。それこそあるがままの現実を知覚するためにはNiの対になるSeへの意識はとても重要になってきます。特にNiメインの方はMBTIを学ぶことによって自分のビジョンを現実にする手がかりになり得るでしょう。Niメインじゃない方であれば、それ以外に自分が持っているスキルセットをどのようにNiへ収束していくかがカギとなるかもしれません。自分なりのビジョンと言うものは誰しもが持っているはずですから、その実現のためにMBTIを活用することが大切です。