MBTIを現実に活用するにはNとSを見分けるだけで充分

タイトルの通りです。

 IとE、すなわち内向的か外向的かという区分はとても一般的だと思います。これはよく勘違いされているような陽キャ陰キャかという区分では断じてないのですが、ともかく外の世界に興味があるのか、あるいは内省を繰り返すタイプなのかという人の分け方を「初めて聞いた」という人はいないでしょう。

 TとFは見分けづらいという声もよく聞きますが、正直相手と接する時にそこまで注意すべきかと言えばそうでもないような気がします。それよりもPかJか、すなわち行動の判断基準が内向きなのか外向きなのかさえわかれば、あとは本人のスペック次第だと思います。

 FP(=Fiユーザー)は合理的な考えが出来ないわけではなくて、やるべき事は当然理解していてその上で気持ちがシンクロしなければ踏み出せないだけですから、本人の覚悟さえ決まれば何にだってなれます。ただその覚悟を決めるには本人が今後の見通しを立てられる程度には頭が回る必要がありますが。

 逆に現実世界で有能とされているTJ(=Teユーザー)でも本人の根本的な能力がイマイチであればその狭量さのために周りから煙たがられて距離を置かれることになるでしょう。

 TとFを見分けたところで本人の行動のパターンを読み取ることはできるでしょうが、そこに寄り添ったところで大して仲良くなれません。他人と仲良くなるためにはそれよりも判断に至るまでの材料の集め方に理解を示してあげることが必要だと思います。

 なぜなら、それは最終的に価値観に行きつくところであり、価値観を共有する相手にこそ人は心を開くからです。

 例えば、IXFP(=Fiメイン)の受験生が模試の結果を見て非常に落ち込み、「早急に対策を立てなければならないけど気持ちが追い付いていない」と考えているとします。その様子を見て内心思うことは人それぞれかもしれませんが、共感しろと言われたらあなたがどんなタイプだろうが出来なくもないでしょう。「模試が悪くて落ち込む」という経験は誰しもが体験しうることだからです。正直これはMBTIどうのと言うより人間的なスキルの問題だと思います。

 それよりも大切なのはどういった言葉をかけるかです。ここでN型とS型に違いが生まれます。例によって塾講師としての生徒との接し方を考えていきます。

 相手がS型であれば、何かしら明確な励ましの言葉をかけてあげる必要があるように思います。「次があるからまた頑張ろう」「ここを気を付けたら次は大丈夫そう」など、現実に即した言葉をかけることが大切です。S型の価値観からすれば目に見えないことを考えても無駄だという結論になります。アドバイスする側として気を付けたいのは、間違っても複雑すぎるアドバイスや極端に相手を先回りするような言葉をかけないことです。順を追って現実に認識できるような課題を指摘してあげる必要があります。変にからめ手を狙うようなことはせずに、明確な伸びしろが残っていると認識させることが、S型のモチベーションを高めるカギです。本人も気付いていないような事を暴こうとしたところで「そういう訳ではない」と言われておしまいです。

 N型であれば、そもそも本人が現実の裏を突いたことを考えたがるので、いかにそれを前もって先回りできるかがカギとなります。N型の価値観で大事のは、考えられる限りあらゆることに備えることですから、仮定に仮定を重ねてあらゆる状況をシミュレーションしてあげましょう。N型は仮定を楽しむ傾向があるので、いろんな仮定を一緒に考えてあげることで、自然と本人の考えも洗練されていきます。逆に現実に即したアドバイスに留められるとN型は消化不良に陥ってしまうかもしれません。

 とは言えもちろんF型とT型ではその後のアプローチがやや異なります。例えばXNTPであれば早急に上記のようなあらゆる仮定を考慮したアドバイスをするのが大切ですが、XNFPの場合はいったん本人の思考が落ち着くのを待つ必要があります。だとしても、いずれの場合も結局のところ迷いを断ち切るためには考えつくすことが大切だということには変わりません。そういう意味では、フラットな状況において接する方法は変わらないと言えます。接する側の態度におけるTとFの違いは、本人の整理がつくまで待ってあげられるかどうかだけです。行きつくべき結論は実はあまり変わらないのです。

 上記は「自信があったにもかかわらず模試の結果がいまいちだった」というある意味特殊なケースを例に挙げています。これは緊急事態の接し方を例に挙げたのであって、実は通常時にはあまり当てはまりません。

 もしあなたがS型であれば、気が向いたときにでもN型の意表を突いたり相手の空想に付き合ってみるようなことを言ってみれば相手は喜ぶでしょうし、あなたがN型であればあくまで目に見えているような事を話題に出してあげればS型の相手は喜んで話に乗ってくるでしょう。そのように、相手が心地よいと思えるようなコミュニケーションの環境を提供してあげることが相手の信頼を勝ち取るカギとなります。

 簡単に言いましたが、実はこれは結構しんどいことだと思います。なぜならS型は現実に即したことが話題に上るとこれまで安心して心を開いてきたし、N型は世間の思考の裏の裏まで読み取ろうとすることに喜びを感じてきたからです。誰しも人間ですから、コミュニケーションでは自分が安心できるような状況を作り出そうとしてしまいます。これは接する側が意識していないと自分が心地よいと思えるようなコミュニケーションの環境を相手に押し付けてしまうことに繋がってしまうということに注意する必要があります。

 ということは、S型とN型の区別が付けば、「相手はどういう状況に安心するか」ということが分かるようになります。逆に言えば、意識をして相手に合わせないとお互い破綻したことを言っているわけではないのにもかかわらず「なぜか会話がかみ合わない」と言うことになってしまいがちです。

 人間はある程度安心できる相手であれば多少の差異は無視しようと心がけてくれます。つまり、T型とF型の違いは大体乗り越えられるという事です。それらは結局のところ「いつ行動に移すか」というタイミングの違いにすぎません。例えばINFPであれば「言ってることは分かったけど気持ちが落ち着くまで待ってほしい」し、INTPであれば「納得いったからすぐ行動に移したい」という感じです。タイミングの差こそあれど、実は結論は変わらないのです。それであれば、どれだけ間違ったことを言っても「あの人の言ってることは分かるんだけど……」と考えてくれるようになります。これがISFPとINTPであれば話は変わります。「そもそも言ってることに納得できない」となってしまっては自分の事を理解してくれないと解釈されておしまいなのです。

 もちろんT型とF型の区別が付くことに越したことはないのですが、僕は正直なところそこは実用には移れていません。あからさまにFP型で気持ちの整理を優先させたがる生徒がいれば、じっくり時間を使って落ち着くのを待ったりしています。どう見ても本人の準備が出来ていないのであれば、口を開くまで辛抱強く待ってあげるのも大事です。そして大抵の場合は落ち着いたなと感じた頃合いでアドバイスをすると素直に言う事を聞いてくれます。ただ、N型とS型については可能な限り厳密に分別しているし。多少のすれ違いを感じたとしても「いずれは分かってくれる」と信じて接しています。そういう運用でこれまで致命的なミスを感じた事はありませんから、もしかしたら実用レベルではそれで充分かもしれません。そういうお話でした。