ISTJ受験生の性格傾向・勉強法・志望校設定

 ISTJの受験生はもしかしたら16タイプ中最も個人のスペックによって受験勉強の成果に差が生まれるタイプかもしれません。

 もちろんどのタイプでも基本そうですし、ISTJは比較的人口が多いこともあってそう見えているのかもしれません。しかしそれにしても、このタイプは特に共通テスト対策においてはその結果がこれまでの勉強経験に左右されてしまうのではないかと感じています。

 今回は勉強が得意な生徒とそうでない生徒(これまで努力量でなんとかしてきた生徒を含む)に分けて考えていこうと思います。

 性格の特徴

 内向感覚Si-外向思考Teの組み合わせによりどの生徒も言われたことを取り入れようと努力してくれます。

 教える側としてそれはとても喜ばしい事なのですが、あくまで他人からのアドバイスである以上「完全なオーダーメイドの指導」というものは実現不可能です。なぜなら最も効率の良い勉強法は、本人の思考力、性格、好み、これまでの勉強経験など、究極的には本人しか知り得ない情報を基に編み出すしかないからです。

 もちろんこちらとしては本人からそういった情報を聞き出しながら、そして不十分な部分については推測や一般論を交えながら適切な指導法を考えていくのですが、やはり「100%オーダーメイド」は原理的にあり得ないでしょう。ISTJに限らず、塾講師はそういった制約のもとに生徒を導いていかねばなりません。

 それでも生徒が直観タイプであれば、求められれば言語化が不十分でも本人のイメージをアウトプットすることもできるでしょう。しかし、ISTJは感覚型なのでふわっとした言葉を嫌います。嫌うというか、そのレベルの言語化であれば「よく分からない」となってしまうのです。そのイメージが地に足がついていない限りアウトプットすべきではないと無意識に判断してしまうのでしょう。

 「勉強が得意」でこれまでやってきた人

 その点ある程度勉強経験が豊富なISTJであればさほどデメリットになりません。これまでの学習経験により言語化能力を一定以上鍛えてきたからです。またそういう生徒は、「自分のイメージがおぼろげでも何だかんだ伝えられる」という自信もあるでしょうから、「よくわからない」と感じていることに対しても考える手がかりがある限り前向きです。

 「相手に失礼のない限りで、これまで教わったことを踏まえながら、可能な限り平易に自分の疑問を伝えよう」と努力できるので、よりオーダーメイド的なアドバイスを得ることが出来ます。そして思考型のためそのアドバイスが自分に合っているかどうか地に足を付けて判断することができ、また不十分な点があれば相手に忖度なく聞き返せるので、よりアドバイスを洗練させることが出来ます。こうしてさらに成績を伸ばすことが出来るのです。再三共通テストがN型有利だと言っていますが、共通テストは極端な傾向を持つテストですので結局対策の質が結果を左右します。勉強経験豊富なISTJはS型ながら自分に合った対策の方針を立てることで充分に挽回可能なのです。

 勉強を避けてきた人、努力だけでなんとかしてきた人

 一方で、勉強経験が乏しい生徒は本人の性質が上記と全く別方向に作用してしまいます。S型、特にSJ型は自己の経験からありのままに学ぶ傾向が強いのですが、その判断のベースとなる経験に乏しい場合、他人からのアドバイスを問答無用に受け入れてしまいます。N型であれば、「小学生のころテスト前に一度勉強して高得点取った経験」だったり、「youtubeでこういう事言ってた人がいた」というわずかな経験から得られる自己の洞察と他人のアドバイスをすり合わせたりもしますが、経験の乏しいISTJの場合はそれもありません。「よくわからないけど他人がこうアドバイスしてくれたからこうする」ということになりがちです。その結果、「頑張っているのに結果が出ない」という状況が生まれるのです。

 勉強してきたとしても、これまで努力量だけでなんとかしてきた生徒についても特に共通テストにおいては危険です。繰り返しますが共通テスト対策はその質が最重要ですから、結果を出すには自分のキャパシティに囚われず柔軟に対策の方針を立てていくことが求められます。ISTJは過去の成功例に固執してしまう傾向があるので、共通テストに対しても過去の成功例から抜け出せずに結果を出すまで時間がかかってしまうかもしれません。

 指導法

 勉強が得意な生徒

 特に教える側にもモチベーションがある場合は、比較的こちら側の小さな負荷で成績を伸ばすことが出来るでしょう。一緒になって対策を考えることが出来ますし、こちらのアドバイスを一生懸命実践してくれるので、教える側としてはデータを得やすいです。

 学習塾の指導は本来アドバイス→実践→(両者による)検討→アドバイスの繰り返しですから、それをこちらの意図通りにこなしてくれるISTJはとても計算しやすい存在でしょう。(両者による)というのが大切で、アドバイスする側の責任も重大ですが、される側も当事者意識をもって取り組んでくれることが多いので、よりクリティカルな方針が生まれる確率が高まるのです。

 こちらから先回りしすぎる必要はありません。本人の意見を汲み取って、それに即したアドバイスをしてあげるだけで充分だと思います。本人はこれまでの経験から自分の性質や好みを十分理解しているはずですから、取捨選択は本人でしてくれます。もし自分の好みに合わないアドバイスをされたとしても、元々過度な忖度をしないタイプなのでいずれ「自分にはその方針は合わない」と申し出てくれるでしょう。その時にまた考えたら充分です。

 あまり勉強が得意ではない、あるいは要領がよくないタイプ

 勉強が得意でないISTJ生徒が大変というのは特にISTJタイプが「こちら側の言う事をしっかり聞いてくれる」という点に由来します。

 勉強経験に乏しいタイプの場合ISTJの強みである経験からの学びが機能しませんから、こちら側のアドバイスを全てありのままに受け取ってしまいます。当然勉強スタイルは本来人それぞれであるので、「気持ちよく進めていたけど気付いたら本人の特性を無視した指導をしてしまっていて何も身につかなかった」ということが平気で起こり得ます。この時は一見決して気難しいタイプではないのでこちら側の気も緩みがちですが、それでもしっかり気を遣ってこちらから相手の弱みを探してあげることを忘れないようにしましょう。

 何でも素直に聞いてしまうのでスムーズに指導できているかと思いきや、本人が全然モノにできておらず気付いたころには……ということになりかねません。

 一方で、やるべき事を淡々とこなすのである程度センスが備わっている生徒であれば次第に成績が伸びてきます。模試の成績が安定してきたら本人もコツを掴んでいるはずなので、そこまでいけばあまり手がかからなくなります。

 しかし、勉強経験はあるものの要領がよくないタイプは実はもっと大変です。下手に経験があるので、その経験から距離を置いて自分を見直すことが出来ないのです。

 特に大学受験に向けた勉強は、一次関数的に結果が出るものではなくて、適切な勉強を続けていると二次関数的に成績が伸びていくものです(特に共通テストになってからはその傾向が顕著です)。直ちに結果に出ないからこそ「伸びてない時期」の勉強内容の検証と反省が大事になってきます。逆に言えば正しくない勉強をしているといつまで経っても成績は伸びません。高校受験までは努力量でなんとか周りとのギャップを埋めることが出来たとしても、その経験が仇となるのです。

 こういう生徒に対しては、早いうちから意識改革を促さないと非常に危険です。本人の真面目さと高校受験までの実績のために周りの期待が高くなってしまう傾向にあるので、なるべく早めに「手を抜くこと」や創意工夫の大切さを多少強引にでも教える必要があります。

 残念ながら、私はこういったタイプの生徒に対して適切なタイミングで適切に指導出来た経験がありません。職業としての塾講師が本質的には営業職であるという特性上、基本的には「イチかバチかで本人を作り変える」わけにもいかないからです。

 このようなISTJ本人からSOSを受け取ることはあまりないので、本人に強くコミットすると基本的に退塾リスクを背負うことになります。もちろん、運営側としてはなるべく退塾のリスクなど背負いたくないものですので、結果的にズルズルと時期を逃してしまう事になります。

 ENTPの塾講師として私の所感を述べますが、こういうタイプにはESTP的な指導の方が合うかもしれません。こちらからあーだこーだ先回りして考えるというよりは、強引にでも引っ張っていく方が明らかに良いでしょう。ISTJは基本的に自分の経験や見聞きしたことを優先する傾向にありますが、このケースではそれがあてにならない以上、生徒に考える暇を与えさせないことです。

 志望校設定

 まじめで成績優秀であることが多いので、周りの期待に合わせて志望校のレベルが高くなりがちです。

 しかしながら、これまで見てきた通り大学受験への適性は本人の勉強経験やそもそもの地頭に強く依存するタイプでもあります。

 特に国公立を志望する場合は努力ではどうにもならないケースも多いので、指導する側としては厳しいときは厳しいと毅然として突きつける覚悟も必要でしょう。それはそれでこちらが本気で向き合えば本人は受け取ってくれます。

 そもそもの勉強経験が豊富な場合は課題を出せば出すほどしっかり消化してくれるのでこちら側の負担は16タイプの中でも屈指の小ささとなります。ただ、こちら側のアドバイスが非効率的だと感じると目に見えてがっかりするので気を付けましょう